T、Mなどはその典型である。
そのうえ、銀行が安心してカネを貸せる案件自体が減った。
高度成長期まで、日本の企業の経営は、ヨーロッパやアメリカを視察して、進んだ技術を取り入れることだけを考えていればよかった。
何をやれば儲かるか、はっきりしていたから、銀行は安心してカネを貸せた。
海外の最新の技術を取り入れる工場の建設に貸したカネは、滅多に焦げつかない。
しかも、万が一に備えて土地を担保に取ってある。
一方、生身の人間の考え方も大きく変わった。
高度成長期まで、ほとんどの日本人は、従業員の立場で経済に参加していた。
宵越しのカネを持たない江戸っ子ほど貧しくはなかったが、多少の銀行預金を除けば、資産らしい資産は持っていなかった。
80年代後半、もう、日本国内には銀行融資に合った投資案件が残っていなかった。
なのに、豊かになった個人の財産は銀行預金に留まり続けた。
その結果、過剰な預金を抱えて貸し出し先に困った銀行が、土地バブルを引き起こしたのである。
80年代半ばまで、日本企業の投資は、ロー・リスク、ロー・リターンであった。
海外の真似だから、安全ではあるが、爆発的には儲からない。
ロー・リスク、ロー・リターンは、銀行融資に合った案件である。
ところが、80年代半ばまでに、日本は、ヨーロッパやアメリカと同程度の生産設備を揃えてしまった。
ここから先の投資は、うまくいけば爆発的に儲かるが、失敗してゼロになる可能性も高い、ハイ・リスク、ハイ・リターンの投資である。
働いて収入がある問は、別に資産などなくてもかまわない。
問題は、老後である。
伝統的な日本社会では、自分で生活費を稼げなくなった老人は、子どもに養ってもらうことになっていた。
高度成長期に、自分の子どもではなく、年金に養ってもらう制度が確立した。
日本の年金制度は、現実に働いている人が働いていない人の生活費を負担する制度である。
つまり、自分の子どもの代わりに、他人の子どもに養ってもらう制度である。
子どもを育てるには、莫大な費用がかかる。
老後は他人の子どもに養ってもらう年金制度が定着したから、老後に備えて、わざわざ莫大な費用をかけて自分の子どもを育てようと考える人が減った。
日本の現行の年金制度は、確定給付型という。
確定給付型は、どんぶり勘定である。
現に働いている人が納付したカネがどんぶりに投げ込まれ、そこから、掴み取りで定額の年金が給付される。
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